ExcelからkintoneかスクラッチかSaaSかの選び方

中小企業のデジタル化は、紙や口頭が中心の段階から、Excelなどのツールを使う段階、データを効率化して活用する段階、そして事業のかたちを変える段階へと進むと整理されます。「Excelで一通り回る」段階から次へ進もうとしたとき、多くの会社が同じ場所で足を止めます。移行先の候補として、業務特化のSaaS、kintoneのようなノーコードツール、専用に作るスクラッチ開発が並び、どれを選べばいいのか判断がつきません。

移行先を比べる記事は、たいてい3つの手段をメリット・デメリットの表に並べて終わります。導入が速いのはどれか、費用が安いのはどれか、自由度が高いのはどれか。ですが表の丸バツを見比べても、自社がどれを選ぶべきかは決まりません。決め手は機能の一覧ではなく、自社の業務がどんな形をしているかにあります。この記事では、3手段の違いを整理したうえで、選定を分ける本当の分岐点を示します。

選び方の結論 まず「機能比較」ではなく「業務の形」で決める

先に結論を言います。kintone・SaaS・スクラッチのどれを選ぶかは、機能の比較表ではなく「自社の業務の形」で決めます。具体的には、その業務がどれだけ標準的か、逆にどれだけ例外や独自ルールを抱えているかで、向く手段が変わります。標準に近い業務なら既製品で足り、例外が多い業務ほど自由に作れる手段が要ります。

比較検討でつまずくのは、手段を先に決めて機能を眺めてしまうからです。「kintoneが流行っているから」「安いSaaSがあるから」と入口を固定すると、自社の業務がそこに収まるかは後回しになります。順序は逆で、まず自社の業務を測り、その形に合う手段を選びます。以下では、3手段の違いを整理してから、業務を測る物差しを一本示します。

kintone・SaaS・スクラッチの違いを3つの軸で整理する

3手段は「業務とシステムのどちらを相手に合わせるか」で性格が分かれます。自由度・費用のかかり方・導入の速さという3つの軸で見ると、位置づけがはっきりします。

SaaS(業務特化型) 標準に業務を合わせる

会計・勤怠・経費・請求など、業種を問わず共通する業務に、完成された機能を提供するのがSaaSです。導入が速く初期費用も抑えやすい一方、機能は先に決まっており、自社の業務を製品の標準的なやり方に合わせる前提になります。標準に近い業務ほど、この手段は強いです。

kintone(ノーコード) 表計算に近い感覚で自作する

kintoneは、あらかじめ完成した製品ではなく、自分たちで入力画面や一覧を組み立てる土台です。Excelの表に近い感覚で扱え、脱Excelの最初の一歩に選ばれやすいです。SaaSより自由度が高く、スクラッチより手早い中間に位置します。ただし、複雑な計算や大量データ、細かな権限や連携になると作り込みの限界が見えてきます。

スクラッチ(専用開発) 業務にシステムを合わせる

スクラッチは、自社の業務に合わせてゼロから設計します。既製品に業務を寄せるのではなく、システムを業務の形に合わせられるため、例外や独自ルールの多い業務に適合します。初期の費用と期間はかかりますが、合わせ込みの自由度は最も高いです。

選定を分ける本当の分岐点は「業務の例外の多さ」

3手段の違いを並べても、まだ自社の答えは出ません。最後に効くのは、機能の多寡ではなく「その業務にどれだけ例外があるか」という一本の物差しです。ここでの例外とは、取引先ごとに変わる条件、自社だけの独自ルール、他システムとのデータ連携、そして頻繁に変わる運用のことを指します。

例外が少なく標準に近い業務は既製品で足りる

処理のやり方がほぼ決まっていて、取引先や案件によって大きく変わらない業務は、SaaSやkintoneで十分に回ります。会計や勤怠、定型の申請などがこれにあたります。ここに専用開発をあてるのは、多くの場合は過剰投資です。例外が少ないほど、既製品に業務を合わせるコストは小さく済みます。

例外や独自ルールや外部連携が多い業務はスクラッチが要る

一方、取引先ごとに条件が違う、自社固有の商習慣が業務の中心にある、複数システムとの連携が欠かせない――こうした業務は、既製品の標準機能に収まりきりません。無理に合わせようとするほどカスタマイズが積み上がり、かえって高くつきます。例外の多い業務ほど、業務にシステムを合わせられるスクラッチの合理性が増します。機能表の比較ではなく、この「例外の多さ」で線を引くのが、選定の分岐点です。

「既製品に業務を合わせる」ときに起きる手戻りと属人化

例外の多い業務に、あえて既製品を選ぶとどうなるでしょうか。ここに、比較表には出てこない失敗が潜んでいます。標準機能に収まらない例外処理が、結局はExcelに逃げるのです。システムに載らない部分だけを手元のExcelで管理し始め、二重管理が生まれます。脱Excelのつもりが、システムとExcelの両方を抱える状態になります。

しかもその「逃がしたExcel」は、担当者しか中身を知らないまま運用され、属人化が再生産されます。合わない製品を選んだ結果、カスタマイズや運用の作り替えという手戻りが発生し、費用も時間も膨らみます。ギャスが受託の現場で繰り返し見るのも、この「業務に合わない手段を先に選んだことによる手戻り」です。手段は、業務の例外を見きわめてから選べば選び直しがききます。ですが例外を見ないまま入れた仕組みは、後から必ず手戻りとして返ってきます。

費用は初期費用でなく5年のTCOで比べる

3手段は、費用のかかり方が根本的に違います。初期費用の安さだけで選ぶと、後で逆転することがあります。比べるべきは、導入から数年使い続けたときの総額――いわゆるTCO(総所有コスト)です。

SaaSは初期費用を抑えやすいですが、多くは利用者数や取引量に応じた継続課金で、規模が広がるほど月額が積み上がります。kintoneも人数に応じて費用が増え、少人数だと割高になる場合があります。スクラッチは初期にまとまった費用がかかる反面、その後の追加コストを自社で見通しやすいです。どこかの規模や年数で初期費用の大小が逆転するため、5年程度のスパンで並べて比べたいところです。各手段の具体的な費用水準や逆転の目安は脱Excelのシステム化にかかる費用相場と見積もりの見方で扱います。

迷ったときの進め方 小さく試して分岐を見極める

例外が多いか少ないかは、机上だけでは判断しきれないことも多いです。そんなときは、一発で正解の手段を選ぼうとせず、対象を絞って小さく試します。一業務・一部門でSaaSやkintoneを動かしてみると、標準機能に収まる部分と、Excelに逃げてしまう例外がはっきり見えてきます。その例外の量を見てから、既製品を広げるのか、スクラッチに切り替えるのかを判断すればよいのです。

進め方そのものは脱Excelは何から始めるか|システム化の順序と失敗回避で詳しく扱います。手段選びで迷ったら、まず自社の業務の例外がどれくらいあるかを知ることから始めたいところです。3分の業務診断に答えると、あなたの業務がどの型に近く、既製品とスクラッチのどちらに寄せて検討すべきかの見当がつきます。詳しい比較の観点は統合ガイド資料にまとめています。

よくある質問(FAQ)

kintoneとスクラッチはどちらを選ぶべきですか

業務の例外の多さで決めます。取引先ごとの条件や独自ルールが少なく標準に近いならkintoneで足りることが多いです。例外や外部連携が多く標準機能に収まらないなら、スクラッチの合わせ込みが向きます。まず小さく試し、Excelに逃げる例外の量を見てから判断するのが安全です。

SaaSとkintoneは何が違いますか

SaaSは完成した機能に業務を合わせる既製品で、kintoneは自分たちで画面や一覧を組み立てる土台です。標準的な定型業務ならSaaSが速く、自社に合わせて少し作り込みたいならkintoneが柔軟に対応しやすいです。違いの詳細は「Excelとスプレッドシートの違い」もご参照ください。

あとから別の手段に乗り換えられますか

乗り換えは可能ですが、データの移し替えや運用の作り直しに手戻りが伴います。だからこそ最初に対象を絞って小さく試し、例外の量を見きわめてから本格導入したいところです。手段は選び直せますが、飛ばした業務整理は手戻りとして返ってきます。

手段を選ぶ前に残すExcelと外付けの線引きを決める

kintone・SaaS・スクラッチのどれを選ぶかの前に、まず自社の業務のどこを標準の既製品に載せ、どこを外付けで補うかという線引きがあります。手段の比較で迷う多くの業務は、Excelを残したまま、標準に収まらない例外部分だけを外付けに逃がせば回り始めます。何を残し何を外付けにするかはExcelを活かして外付けで補う進め方で全体像を確認できます。

自社の業務を既製品とスクラッチのどちらに寄せて検討すべきか、まず何を外付けにすべきかは、3分の無料業務診断で見当がつきます。

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