Excel業務のシステム化には、既製のクラウドやノーコードで載せ替える方法から、要件に合わせて作り込む方法まで幅があります。どれを選んでも初期費用はかかるため、その一部を国の補助金でまかなえないかを最初に調べる会社は多いです。実際、業務効率化のためのITツール導入を後押しする制度は用意されており、条件を満たせば費用の一部が補助されます。ただし補助金は、あくまで手段の費用を軽くするものであって、どの手段を選ぶかを決めてくれるものではありません。この記事では、補助金でExcel業務をシステム化する手順を順序立てて示し、そのうえで「補助金に合わせて手段を選ぶ」落とし穴の避け方まで整理します。
補助金でExcel業務をシステム化する4つの手順
先に全体の順序を示します。補助金でExcel業務をシステム化する流れは、大きく4つの手順に分けられます。棚卸し、手段の決定、対象制度の選定、支援事業者との申請です。ここで押さえたいのは、補助金を調べる工程が3番目に来ることです。
一つ目は、いまExcelで何を回しているかの棚卸しです。どの業務で、誰が、どんな使い方をしているかを書き出し、システム化する対象を絞ります。二つ目は、絞った業務にどの手段が向くかを決めます。既製のノーコードで足りるのか、作り込みが要るのかを、補助金の対象かどうかとは切り離して判断します。三つ目で初めて、決めた手段に使える補助金を探します。四つ目が、補助金の窓口となる事業者と組んで申請する工程です。
補助金の解説記事の多くは、申請の流れとして「制度を知る」「対象ツールを選ぶ」「申請する」を最初から並べます。ですが対象ツールから入ると、業務ではなく制度に合わせて手段が決まってしまいます。手順の見た目は同じでも、業務を先に決めるか制度を先に決めるかで、出来上がる仕組みは変わります。何から始めるかの答えは、補助金の要領を開くことではなく、自社のExcelを棚卸しすることです。
補助金で使えるExcelシステム化の制度と対象範囲
手段が決まったら、それに使える制度を調べます。Excel業務のシステム化で候補になる補助金と、その対象範囲を押さえておきたいところです。金額や要件は年度と公募回で変わるため、ここでは目安として示し、最終確認は必ず公式で行います。
デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)
Excel業務のシステム化で第一に挙がるのが、旧IT導入補助金にあたる「デジタル化・AI導入補助金」です。事務局に登録されたITツールの導入費用の一部を補助する制度で、通常枠は補助率が原則2分の1以内、補助額は選ぶ業務プロセスの数に応じて、1プロセス以上で5万円〜150万円未満、4プロセス以上で150万円〜450万円以下が目安とされます。会計・販売管理や在庫・物流、人事給与などの業務プロセスを持つソフトウェアが対象になります。制度名や枠組み、金額は改定されるため、最新は公式でご確認ください。
ものづくり補助金など他の選択肢
作り込みを伴う業務システムでは、ものづくり補助金など別の制度が候補になる場合もあります。制度ごとに対象経費や補助率、上限額、申請要件が異なり、Excelのシステム化がそのまま対象になるとは限りません。呼称も含め、対象になるかどうかは各制度の最新の公募要領で確認します。
補助金の対象は「登録ツール」に限られる
見落としやすいのが、補助の対象になるのは事務局に登録されたITツールだという点です。要件に合わせてゼロから作り込むスクラッチ開発は、登録ツールにあたらず対象外になりやすいです。つまり補助金が使えるかどうかは、選んだ手段によって変わります。既製の登録ツールで足りる業務なら補助金が効き、作り込みが必要な業務では補助金の枠から外れることがあります。ここを知らずに「補助金が使える手段」だけで選ぶと、次章の事故につながります。
補助金ありきで手段を選ぶと起きる2つの事故
ここが本記事の要点になります。補助金は費用を軽くする手段であって、手段を選ぶ基準ではありません。それなのに「補助対象になるか」を先に置くと、業務ではなく制度に合わせて手段が決まり、二つの事故が起きます。
対象に合わせた過剰投資
一つ目は過剰投資です。補助金には上限額があり、補助率も決まっています。すると「せっかくなら上限まで使いたい」「補助が出るなら多機能なほうを」という力が働き、本来は小さく始めれば足りた業務に、必要以上の規模のツールを入れてしまいます。補助が出ても、自己負担分と、使いこなせない機能の運用コストは残ります。補助金は総額を割り引きますが、要らない機能まで割引価格で買えば、支出そのものは増えます。
登録ツールに載らない例外業務がExcelに残る
二つ目は、脱Excelが未完で終わることです。補助の対象は登録ツールに限られるため、補助金を優先すると、本当は作り込みが要る例外業務まで既製ツールに寄せてしまいます。ですが既製ツールに載りきらない処理は必ず残り、それは結局Excelで回し続けることになります。補助金でシステムを入れたのに、月末の集計や特殊な取引だけがExcelに取り残されます。属人化した処理ほど登録ツールに収まりにくく、いちばん手放したかった部分が残ります。補助金に手段を合わせた代償が、この「消えないExcel」です。
まず業務の型を決めてから対象制度を選ぶ
二つの事故を避ける順序はひとつです。補助金を最後に置きます。まず業務の型を決め、その型に向く手段を選び、決めた手段に使える制度を後から当てはめます。順番が逆になると、制度が手段を決め、手段が業務を歪めます。
Excelを棚卸しして残す業務と手放す業務を仕分ける
出発点は棚卸しです。Excelで回している業務を書き出し、頻度・関わる人数・ミスの影響で仕分けます。少人数で内容が都度変わる業務はExcelに残し、複数人が同じ処理を繰り返し、数字が請求や経営判断に直結する業務を手放す対象に選びます。全部を移すのではなく、業務ごとに線を引きます。この線引きが、そのまま「どの手段が要るか」を決める材料になります。
型が決まってから補助対象の手段に当てはめる
対象が絞れて初めて、手段を検討します。既製の登録ツールで足りるなら、そこにデジタル化・AI導入補助金が効きます。作り込みが要る業務なら、補助の枠に入らないことを前提に費用を組みます。補助金が使えるかどうかは、この段階で分かれば十分です。型を決めてから制度を選べば、過剰投資も、例外の取り残しも起きにくくなります。補助金は、手段を決めた後に費用を軽くするために使います。
IT導入支援事業者の役割と選び方
デジタル化・AI導入補助金は、申請者が単独で申請するのではなく、登録されたIT導入支援事業者と組んで申請する仕組みになっています。ですから、どの事業者と組むかが、補助金の使い勝手と、システムの出来の両方を左右します。
申請は支援事業者とペアで行う
支援事業者は、対象ツールの提供と申請手続きの支援を担います。申請の窓口が事業者側にあるため、制度に詳しいかどうかだけでなく、自社の業務を理解して手続きを進めてくれるかが実務では効いてきます。
ツールの売り手か業務の伴走者か
注意したいのは、支援事業者はツールの売り手でもある点です。自社が扱うツールに寄せた提案になりやすく、そのツールが自社の業務に合うとは限りません。選ぶときは、補助対象のツールを勧めてくるかではなく、まず業務を一緒に棚卸しし、残す業務と手放す業務の線引きから設計してくれるかを見ます。補助金の話から入る相手より、業務の話から入る相手のほうが、結果として手戻りが少なくなります。
補助金を待つ間にできる準備と手戻り回避
補助金は公募の時期が決まっており、採択されるまで待ちが生じます。その間にできる準備を進めておくと、費用も手戻りも抑えられます。準備の中心は、前述の棚卸しを一枚の業務フロー図に起こすことです。どのファイルで何をしているか、どこに手作業と例外があるかを図にすると、支援事業者やベンダーが同じ前提で見積もれます。この一枚が、要件のブレによる追加費用を減らします。
あわせて、費用は補助後の自己負担だけでなく、稼働後の保守や月額まで含めた総額で見ておきます。補助金は初期費用を軽くしますが、続ける費用は残ります。費用の内訳の読み方は、別記事の脱Excelのシステム化にかかる費用相場と見積もりの見方で解説しています。
よくある質問(FAQ)
補助金を使えばExcelのシステム化費用は全額まかなえますか
まかなえません。デジタル化・AI導入補助金の通常枠は補助率が原則2分の1以内で、自己負担分が残ります。上限額もあり、対象は登録されたITツールに限られます。作り込むスクラッチ開発は対象外になりやすいです。補助率・上限・要件は年度と公募回で変わるため、最新は公式で確認します。
補助金が使える手段を優先して選んでよいですか
順序が逆になります。まず業務の型を決め、向く手段を選び、その手段に使える補助金を後から当てはめます。補助金を先に置くと、対象に合わせた過剰投資や、登録ツールに載らない例外業務のExcel残存が起きやすくなります。
補助金の申請は自社だけでできますか
デジタル化・AI導入補助金は、登録されたIT導入支援事業者と組んで申請する仕組みです。どの事業者と組むかで手続きの進み方も、出来上がる仕組みも変わります。ツールの売り手としてだけでなく、業務を一緒に設計できる相手かで選ぶとよいでしょう。
補助金の前に残すExcelと外付けにする業務を決める
補助金を先に置くと、制度に手段が引きずられ、いちばん手放したかった例外業務がExcelに取り残されます。まず残すExcelと外付けにする業務を線引きすれば、補助金は決めた手段の費用を軽くする役割に収まります。何を残し何を外付けにするかはExcelを活かして補う進め方で全体像を確認できます。
自社のどの業務を残しどこを外付けにすべきか、次にどの手段が向くかは、3分の無料業務診断で見当がつきます。
